森博嗣「朽ちる散る落ちる」(講談社ノベルス)、読了。


え〜っとタイトル…“チルチルミチル”?そんなことは置いといて(でも語感が良いのは確か♪)。

今回のキーワードでもあり、近年私が好んでいること“抽象的”を中心に読み進めてしまいました。2つの密室の謎もあるにはあるのですが、謎を紐解いてみようと試みればゴム紐でできていてどこまでもトポロジィだったり。チェックを入れたページが“抽象的”の直喩と暗喩のオンパレードであったり。「騙されている」、と感じるより「謎を解かないで欲しい」と読み取れてしまう抽象性を文面から読み取りました。

また、2001/09/11の事件に対して作者がキャラクタに注釈を述べさせる部分も(大変珍しいことでありますが)有りました。まるで氏のかつてのWeb日記です。言葉を置く、気付ける者だけが拾えば良い、といった突き放し方とは明らかに違うメッセージ性であります。この方面に私が過敏なアンテナを立てていた点もこれを加速させてはいますが。

>文字を読むためにライトをつけておいて、これ
>が本当の明るさだろうか、暗いところで苦労し
>て文字を読むことに人間らしさがあったのだ、
>と主張しているのと同じ。

このようなセンテンスを読むと、執筆時期を逆算してしまいます…。資本主義の象徴たる世界貿易センタービル(ちなみに浜松町の駅ビルは同名だったりしますね)の破壊。テロルについての考え方、そして氏の本業としての肩書き、建築学科助教授。どのような思索の種が物語を構成させたのか、ついつい追ってしまいます。

先鋭的な新しい価値はときどき胸に痛い。そんな想像力を膨らませてくれる読書時間でした。



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