休暇っぽく休日を過ごした日。昼過ぎに出掛けて行って、のんびり書店で立ち読みに耽る。とりあえず新刊本の平台をチェックして、どこも代わり映えのしないラインナップに一瞬間で目を背ける。ノベルスサイズのコーナに足を向かわせると、駅に併設されている書店と全く異なり身長より高い書棚にうず高く、そして隙間なく積み上げられている背表紙を見上げ、思わず海老反りしてしまう。ここの平台では西尾維新氏のノベルスが全巻置かれている。図書館のメールマガジンの予約状況ランキングで上位に入っている、というのはホントのようだ。

 それにしても書店というのは不思議な空間だと思う。何故こんなに頭がすっきりしてくるのだろうか。そこで手を伸ばせばほとんどの文献を探すことが出来る。集中力も途切れない。紙埃が舞っている筈だし、下半身と首の筋肉に負荷をかけ続ける悪条件下であるというのに。……更に悪いことに取りとめもなくいろんな想像が浮かんできてしまうのだよね。現に、報告書作成の足しにしようと思ってExcelのピボットテーブルとかTIPS系をぺらぺら捲ってみたり。数ページのために二千数百円出せないから、自然と記憶しようとしちゃったり、ね。お金と交換する瞬間ではなく、店に置いてあるうちが一番価値のある状態なのかもしれませんね。否、きっと。

 同じことが雑貨屋さんにも当てはまると思う。置時計とか文房具とかピローケースとか、部屋に戻って買い物袋を下ろした瞬間に存在価値が潰える経験、チラホラ浮かんできたり。悲しいお金の使い方ですね。プランを立てずにその場の雰囲気で買い物籠に投げ込んでしまう。あとで同じ柄の靴下を発見したり、使うアテのないパンク修理キットに苦笑いしたり、ハンドタオルやらバインダやら、もうなにやら……。

 非日常な刺激を受けられるから新鮮な気持ちでいられるのですけどね。

 本日訪れたのは新宿のin The Room。雑貨・インテリアなお店なわけなのですが……。肝試しor興味本位で行ってみたい場所ナンバーワンなアレのソレを扱っている、「izyum clothing」というショップがあったりします(壊れてきたか?爆睡しながらせこさんにつっこみ入れておきましょう……)。リンク貼っとく?

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森博嗣著、「虚空の逆マトリクス」、読了。

 優しさ、感情の機微、温かみ。読み終わったあと頬の筋肉が微笑を形作るのは、それだけ優しさのビタミンに飢えているからでしょうか?きっとそうだろう、という自覚はありますが…。

 森氏の短編集を読むと、氏の読者であったことに有難みを感じてしまいます。なぜって一人の作者を追いかけるだけで、多面的で多彩色な風景を見せてくれるから。特に今作はハートフルな色調が多いので尚更でした。また、こうして一日の四方山ごとをテキストに移している者にとって、文章表現に広がりを感じさせる標本として感銘させられるものでありました。

『ゲームの国(リリおばさんの事件簿1)』
 私のように、テキストとしてアップロードする頻度が落ちてきてしまっている方に良い参考になるかもしれない作品。歴史には残らない種の徒然な文字の羅列。具体的デキゴトの間にふっと湧いては消えてゆく泡を、そのまま紙の上で弾けさせた雰囲気のある読感。一般にストーリィの流れは整然と、そして展開の上下がセットされているもの、が多いです。が、この作品を特徴付けているのが「小話があっちこっちに逸れまくる」のです。上から読んでも下から読んでも変わらない“回文”に笑みを浮かべてしまうこと必死でしょう。この作品に限らず、繊細で抽象的な、それでいて優しさに溢れたテキストに仕上がっています。才能に更に磨きがかかっていて……ただただ羨望。

『いつ入れ替わった?』
 ご存知、犀川&萌絵シリーズの短編。今作の面白みとして、「小説家になるための習作」となっても十全な文脈構造がまず挙げられるのではないでしょうか。タイトルにもなっている置き換えが、トリック部分・感情表現部分、とに伏線として張られているのです。とにかく短編ですし、非常に分かりやすく構造が読み取れます。

 えっ?そんなことはどうでもいいって?

 正当なファンサービスなので、シリーズを通読した読者は存分にサービスされちゃってください……(にっこり)。出だしから犀川先生、態度が不審ですものね。場の雰囲気が読めて機転が利く喜多先生が人気あるのも頷ける気がします。ちょっぴり意地っ張りな犀川先生を見れるのも今回ならでは。おめでとう(^_^)



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