■天動説の絵本―てんがうごいていたころのはなし
ISBN:4834007510 − 安野 光雅 福音館書店 1979/08 ¥1,575

ニュース記事:小学生の4割が天動説を支持
http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20040412i306.htm

「正しいこと」
「当たり前のこと」
「常識」

 なぜ?、と疑問に思う前に答えは教えられている問題に出会う。解は一瞬に、正確に。しかし、

「その理由は?」

と自問すると論証できなかったりする。小学生が(統計結果のミスディレクションとしても)天動説を支持しているとしても、地動説を支持する大人の何割が地動説を説明できるだろうか。私も例外ではない。

 知らなくても生きていける…。この言葉が持つ遠回しな残酷さに気付いてしまってからは、目を瞑って通り過ぎる事が出来なくなってしまっている。知識はページを捲っていれば勝手に蓄積されるが、知恵は精神を集中させてシナプスを繋いでいかないとどうにもならないからだ。

 地球と太陽の関係、そして月の関係から観察すれば、質量の小さいものがより大きなものに従属する。太陽系に限って云えば惑星の関係となるはず。ただこれだけの材料だと、自転と公転の差異で躓くことになるのでどうするか〜、としばらく考えてみたけれど、黒点や月の兎なわき道に陥り、自力では頓挫(情けない)。天動説の抱える矛盾は指摘できても…、むぅ。

 これでは天動説の妄信で科学者を殺めてきた歴史と変わらない。黒死病を魔女の仕業と擦り付け、若き乙女を火にくべたのと変わらない。

 森博嗣氏のミステリィで『笑わない数学者』という作品があります。探偵役の主人公を地球上から定点観測する古き神学者、そして読者を現代の地動説を支持する観察者、に例えた壮大な逆トリックのミステリィ作品です。「なぜ主人公は犯人に気付かないのだろう?」、といぶかしみながら読んでいました。

 私たちが星座に思いを馳せるとき、プラネタリウムのイメージに束縛されてはいないでしょうか。天球に星々が張り付いて、地球(あなた)の周りを廻る機構はまさしく天動説の所作です。諸事情あるとは思うけれど、一つくらいはメリーゴーランド式のプラネタリウムもあればなぁ…、と自己の無知をさらけ出しながら思うのです(太陽系以外の恒星も同時に説明するのなら、複数設置が必要なので大変そうですけれども)。

 …思いつくままに書き連ねてみましたけれど、発想の原点になったのは大学時代に古本屋で出会った『天動説の絵本』、やはりこれなのだろうなぁ、と回想してみたのでした。

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