ISBN:4087747085 単行本 森 博嗣 集英社 2004/07/26 ¥1,575

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■森博嗣著「工作少年の日々」、読了。

 森博嗣的「ライフスタイル・ブック」、…と捉えるのが分かりやすい(適切かどうかはさておき…)解釈か。もし貴方に誰にも譲れない趣味があって、注ぎ込める額が収入の1/10と制限を設けられてしまったらどうしますか?この本は、収入の母数を大きくして自由に使えるお金を多くしよう、そしてそのための手段として小説を書こう、と決意した作者の生き様が刻まれています(大袈裟な)。

 鉄道模型やラジコン飛行機など、森氏のあらゆる行動の背骨と云ってもいい領域について、各種事例を取り上げながら普遍的価値を見出せる話題について、抽象→具体に述べ上げています。

●工作とエントロピィ
(彫刻とプラモデルの違い、或いは言い訳)
●気分転換のリセット効果
(主観的にはシーケンシャル、観察的にはカオス)
●日曜大工とプロフェッショナル
(でも募金活動はより多く稼ぐ事が目的ではなく、ボランティア精神の踏み絵だと思います…)
●愛は一度示しただけでは駄目なようだが、力は一度見せれば充分
(なるほど!)
●根本的な問題から先に解決着手するべきこと
(洗濯機と排水溝の例え話は…演じてます?)
●デザイン、すなわち最適化
(アートは対義語、製品的機能を求めちゃいけません)
●設計図にはノウハウ(アニマ)は現れない!
(それが神髄ゆえ、手習いは貴重)
●飛行機は空を飛ぶための形をしているのであって、人間のウケを狙って翼を広げているわけではない
(背中を見て誰某は育つ?)

 すらすら読めるエッセイ形式の皮を被った、森氏の一貫したテーゼが地雷のように仕掛けられております。私のように自我の薄い者は、地雷原にダイブしてうっかりさ加減を自虐的に楽しんでおります。ミステリィでは読解力・思考力が乏しいほど(うっかり八兵衛状態)、「なるほど、そうだったのか!」とトリックを驚きをもって迎えられると云われます(もちろん、作者のミスディレクションも同じくらい大きな要素ですけれど)。犯人探ししたい一方、驚かされたい。それがミステリィというジャンルの矛盾点であります。しかし森的ミステリィでは一つハードルを越えた読者にこそ、新たな謎が提示されるなど、挑戦にあふれるもの!今作も人生の先達(せんだち)の手習いとして、上手く利用させてもらいましょう。

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