■2004.08.28 マイニング・ゲーム。

 ガキんちょの頃。“ビックリマンチョコ”という、ウェハース菓子にイラストの描かれたシールが付いたお菓子が大流行したことがある。クラスの男子は例外なく熱に冒されたかのようにコレクトに夢中であった。

 どこからともなく入荷情報が流れ、放課後にいちもくさんに買いに走る光景は、当時の日常茶飯事であったように思う。一部の顧客に一瞬に買い占められる様を目にしてきた店側は、異常事態を憂慮し「お一人様3個まで」と張り紙をするようになった。

 次第にほとんどの店でそのような対策が執られるようになり、小学生の間に危機感そして欠乏感が到来した。そのうち、「この店は何曜日に入荷する」な情報は特に仲が良い友達内でのみ、共有される秘匿事項になり、一種の縄張りが形成されていった。

 手近にある店は情報網を持つグループによって抑えられており、レアリティの高いシールを手に入れるためには隣町にまで遠出しなくてはならない状態となっていた…。

 そんな世紀末な(?)風景のとき。

 小学校からそう遠くない駄菓子屋でビックリマンを見つけてしまった。お婆さん一人で細々と営業していて、建築耐用年数を遙かに越えたように見える、いわゆるひなたびた駄菓子屋だった。何故か近所の農家で栽培していたと思われる白菜の束(3個セット)を軒先に並べていたので、今思えば子供を寄せ付けない雰囲気を醸していたのかもしれない(巨大な白菜を、しかも束で欲しがる小学生はさすがにいないだろう)。

 この店、駄菓子の売り方も独特であった。セロファンの袋に複数のお菓子を詰め合わせて売っていた。単品で買うよりも安くなっているのは確かなのだが、ビックリマンしか関心のない子供的には抱き合わせ販売にしか映らなかった。

 しかし、店頭で見かけることすらも稀となっていたので仕方無しにお金を払うしかなかった。だが、一つの奇跡が起こる。

『販売完了となっている前期のシールが出る』

 ビックリマンシールは販売時期によって付録のシールがフルモデルチェンジする。口コミで田舎にまで伝播するころには、前のバージョンは“伝説の存在”となっていた。最初期のシールの絵柄などは「一番強いに違いない」と無根拠に噂される有り様であった。

 興奮し有り金叩いても、ほんの数袋しか買うことができない。店番のお婆さんは、驚喜乱舞する小学生を怪訝な目で見たに違いない。だが浅はかな子供のこと、事の真相をべらべらとお婆さんにも、クラスメイトにも喋ってしまったのだった。黄金にも匹敵する情報をしめしめと、さっそく狩場に殺到する子供たち。小金持ちな子はコインなどではなく、ゼロの並んだ紙幣でバブルに買い漁ったものだった。

 口の軽さに後悔を覚えつつ、負けじと再度その店に通ったある日のこと。相変わらず抱き合わせの袋群から一つを念じて選び出し、胸を高鳴らせながら包装紙を破ってみると…。そこには現行シリーズのシールが。

 果たして間もなく。次第にその店に足を運ぶ子供は少なくなり、やがて絶えた。売れることに味をしめたお婆さんが問屋から新たに仕入れたのだろう。だがその店のウリである前のバージョンのシールで無くなり、ただの抱き合わせ販売の一つでしかなくなっていたのだった…。

 バーコードに代表される商品コードは同一であっても、売り上げ実績は顕著に差異を示した。店舗から上がってくるデータは事実を証明するものではあるが、結論を雄弁には語ってくれない。センターサーバのデータウェアハウス(DWH)で原因を分析し、仕入れ根拠のデータにまでフィードバックするには、「何が売れ筋アイテムか」では不足で、「何が要因でそのアイテムが売れたのか」、という購入動機のプロセスまで分析しなければならないのだろう(相当将来的なハナシになるはずだと思いますけど)。

 …そんな昔なつかしのビックリマン妄想終わり。と、ワンフェス帰りの電車でガレキ抱えて執筆してみたりする。

 

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