「スポーツに幻想を重ねて捉えてしまうのは何故だろう?」

 ひょんに、疑問が思い浮かぶ。私が不思議に思う幻想とは、マスコミに登場する紳士淑女な態度な競技者自の姿である。畏まり過ぎて、レンタルキャットみたいだなぁ、と訝(いぶか)しんでしまうこともあり。

 長年疑問のまま、脳漿の奥に凍結されていましたが、この作品を読んで一気に解凍され記憶にあふれ出しました。

■小説「銀盤カレイドスコープ Vol.1」、海原零氏著

 若手フィギュアスケータの主人公が、ライバルと競い、また世間の評判と抗う、本能むき出しな物語。一応断わっておくと、何の予備知識の無い読者をフィギュアスケートの世界に惹きこみ、高揚と共に一体感を得る、大変魅力的なストーリィ展開です。

 …が、冬季オリンピックなどで垣間見る大和撫子調な態度ではなく、自我一尊絶対視なよーなスバラシイ主人公なのです。有体の世間常識といつも衝突し、口論になってしまう有様。

 「スポーツマンはかくあるべし」論の矛盾を指摘し、協会関係者やマスコミを敵に回していく様は、もーどうなっちゃうのだろーと心配絶えません!(でも楽しい!)。健全な肉体に健全な精神が宿るかどうかは証明できませんが、世間の都合のいい方向に性格が向かっているかは、また別の話。こういう妄信を破壊してくれるモラルハザード的ストーリィは、胸がすっきりしますね♪

 ライトノベルなので行き来の電車内で読みきれる分量なのもいいところっ。

ISBN:4086301326 文庫 海原 零 集英社 2003/06 ¥600

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